修学旅行はなぜ高い!? その理由と現状

「修学旅行は高い」というイメージを持っている方が多い。確かに格安ツアーがたくさん出回っている中で、修学旅行はそれらと比べると非常に割高に感じる。
では、なぜ修学旅行は格安ツアーに比べて高いのだろうか。
あまり表に出ることのない修学旅行の金額の設定について解説をしてみたい。

◆ フルオーダーメイド

旅行会社は、一部を除き、自社でホテルや航空機、貸切バスなどを所有しているわけではないので、あくまでもそれらを他社から購入し、旅行商品を作っている。従って、それらの素材が高ければ旅行代金は必然的に高くなる。

修学旅行は日程、日数、発着地、食事、宿泊地、行程などすべての内容を学校と打合せをしながらきめていくフルオーダーメイドの商品である。それに対して、格安ツアーは旅行会社が自社の都合でパッケージ化したものを売り出すという、既成商品である。

例えば、スーツを買う際に、生地、裏地、ボタン、ステッチなど、自分にぴったりと合うサイズで、自分の好みで作るフルオーダーメイドスーツと、量販店で画一的に販売されている既成のスーツとでは金額が全く異なるというのと同じである。
生地や裏地など素材が安いものを揃えていけば、若干リーズナブルに仕上げることができるのと同様に、時間の悪い航空機、質の低い宿、量の少ない食事などを選んでいけばリーズナブルに旅行することが可能だが、それでも既成商品と比べると割高なのはお察しの通りである。

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◆ 人数が多過ぎる

では、修学旅行をこの既成商品のパッケージツアーで行くことはできないのだろうか?

通常パッケージツアーは航空機やJR、ホテルなどを旅行会社が事前に割安な価格で仕入れ、それを在庫として抱えて販売をしている。当然売れ残りが少ないように例年の販売数などのデータをもとに商品を作成しているわけで、多くても20〜40名程度の仕入れが一般的である。当然格安のツアーとなると更に数が限定されている。
多いところで300名以上の生徒が一斉に動く修学旅行では、この在庫では当然足りず、更に、航空会社やホテルなども20〜40名分程度であれば、割安の料金で旅行会社に卸すことはできても、これだけの数になってくると、トータルの利益を考えて割高の設定をせざるを得ない。

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◆ 予約時期が早過ぎる

既存のパッケージツアーは、どんなに早くても約1年前くらいからの販売で、一般的には半年前くらいから、格安のプランになると余った座席や客室を売り切るため、出発の直前に販売される。
それに対して、修学旅行は早い場合で、実施の約2年前くらいから予約をし、事前学習に備えていく。

なぜ、そんなに早くから予約をしなければならないのだろうか。
修学旅行は生徒にとっても学校にとっても最も重視されている行事のひとつである。
従って、一番最悪なケースは「行けなくなること」であり、それを避けるために、早くから予約をする必要がある。
また、修学旅行シーズンは決まっていて、だいたいどこの学校も学校運営上の問題から同じような日程を希望するので、希望通りの確保をするためにはこのタイミングで予約をすることが必要になっている。
この現状に、航空会社やJR、ホテルなども協力をし、一般の団体よりも先に修学旅行の予約の受付を始めている。当然そのような早いタイミングから数多くの座席や客室を抑えるということは、それ以降にもっと高い金額で買ってくれるかもしれない客層に対しての販売チャンスを失うということにもつながるため、そこまで割安ではない「修学旅行料金」という料金を各機関が設定しているのである。

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◆ その他の疑問

「修学旅行は高い」と言われている中で、様々な憶測が飛び交っているが、それらは本当にそうなのだろうか。

  • 学校との癒着があり高いのでは?
    学校側は修学旅行の取扱業者を決めるにあたり、一般的に5〜6社、多いところで10社以上から見積りを取り、競合コンペを行う。金額だけで決める学校が全てではないが、それだけの相見積もりをとることによって、特定の旅行会社が高い金額で受注するといったケースはほとんど見られない。
  • 先生の旅行代金が生徒に付加されて高いのでは?
    実際には先生方の旅費は出張旅費として公費や学校側から支払われているケースがほとんどである。出張旅費だと、支払われる金額が決まっているケースが多く、高いホテルでの宿泊になると、先生自ら自腹を切っている場合もある。
  • 旅行会社が儲けているのでは?
    修学旅行は大人数が必ず毎年旅行をするということで、大手の旅行会社はかなり力を入れている。しかしながら、前述の通り複数社での競合がほとんどのケースであり、金額が高ければ受注することができない。場合によっては、利益が全くない、または赤字になってしまうこともあるのが現状である。
    それに対して、パッケージツアーは料金設定は旅行会社が行うため、赤字にしてまで実施する意味はあまりなく、利益率という点から見ると、割安に見えるパッケージツアーの方が儲かっているということもある。

修学旅行は1年以上打ち合わせを重ねて作り上げている旅行なので、旅行会社からすると多大な労力を費やす商品である。にもかかわらず、競合が激しく薄利になっている中で、撤退を余儀なくされている旅行会社があるのも事実である。

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◆ まとめ

航空会社や鉄道、ホテルなどの「修学旅行料金」が下がらない限り、それを単純に足し算していく旅行代金を安くすることはできない。

ただ、一生の思い出となる修学旅行だからといってあまりにも高級志向で良いホテルに泊まり、贅沢な旅行にするというのも違うと思うし、かと言って「安かろう悪かろう」になってしまっては元も子もない。
旅行会社と学校が知恵を絞って、納得感のある妥当な内容と金額で修学旅行を実施することがこれからも求められていくだろう。

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